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モッズ・ヘアの勤労青年

今どき、鍵を閉めずに寝られるマンションなんて、そうそうないだろう。でも、オットー&ケイトリンが住まうマンションでは、まだイケるらしいのである。通路を吹き抜ける風を取り入れようと、スニーカーやサンダルを挟んでドアを開けておく部屋が、結構見受けられるのだ。

不審者出没!注意!」という張り紙が出たのは、2週間くらい前のことである。周りには新しくてステキなマンションがいっぱいあるので、泥棒は入らないだろう。でも、“まだまだ昭和が満ちている、ココの平和を乱すなんて!”…夕暮れ時、蝉時雨に蚊取り線香が匂うたび、心が痛んでいたのである。

“今までは夜中にゴミ捨てしてたけど、怖いから朝にしよう”…ケイトリンは少し明るくなった朝4時に、家を出た。「“出た”なんて大げさね!」と思われそうだが、2棟がそびえる大型マンションでは、ゴミ捨て場までの往復が、5分では済まない

エレベーターホールでボタンを押すと、9階に止まっていた1基が上ってきた。1階から上がってくれば人は乗っているが、途中の階からはまずありえない。汗だくのスッピンを見られなさそうで、ホッとする。11階に着いた時も、当然誰も見あたらず、完全に安心して乗りこもうとすると…「ギャッ!!」。瞬間、男が現れたのだ

オカッパに太い黒縁のメガネをかけ、汚れた白いTシャツを着た痩せぎすの男…“何者なのか、サッパリ分からない”。どんなカテゴリーにも仕分けできないこの男を見たとき、“ああ、間違いなくアタシの人生はここで終わる”、そう思った。

心臓が口から滑り出しそうになり、後ずさりしたとき、運命の扉は開いた。「は?」…いきなり男が言う。「え?!」…総毛立った全身から力が抜ける。男の手には新聞の束、朝日新聞さん、ご苦労さまです。ウチのオットーが愛読してます…。

エレベーターの上部の窓からは姿が見えなかったが、新聞を抱え上げて中腰になっていたのだろう。「す、すいません。驚いたもので」、「はあ…」。“何?この女”と言わんばかりの侮蔑のまなざし、配達員はサッサと歩いていった。ケイトリンはなぜか敗北感でいっぱいになり、エレベーターのなかで愚痴を反芻した。

“アンタはワケが分からなかっただろうけど、アタシが驚いたのは無理ないワ。アンタの髪型、何よ? 新聞を配ってる勤労青年には、全然見えないわよ”。

別に“この職業には、こういう雰囲気じゃなきゃ!”って考えに固執しているワケじゃない。明け方に突然モッズ・ヘアを目撃したから、“不審者にしか見えない”って思ったのである。

帰ってくると、きちんと新聞が差しこまれていた。オットーは安らかな寝息を立てて、眠っている。ケイトリンの枕を抱きしめているので引っぺがすと、今度は上掛けを丸めて、ひとり占めしている。思えばオットーも、新聞配達員だった。50キロそこそこでやせ細っていたオットーは、配達先で牛乳をご馳走になったりしたそうだ。

このご時勢じゃ、そういう親切な人もいなくなっただろうし”…新聞の集金が来ると、やけに優しくなるオットーを思い出し、痩せぎすモッズ・ヘアの勤労青年の苦労を思った。

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コメント

明け方のモッズヘアさぞびっくりだったでしょうね。
私の町内でもそんな風貌な方々います。

寝てるときはさすがにとびらあけたままは怖いです。
おきたら真っ先に玄関にいき、ドアをあけて空気の入れ替えします。最上階のうちの家は朝でさえ真昼並みの暑さです。
外がどんなに涼しいか・・・。

投稿: ひろみ | 2008年8月14日 (木) 12時48分

ひろみさん、どもー!
あたしもそう思います。この物騒な世の中、しかも「不審者出没」でドアを開けたまま寝るなんて、イイ度胸ですよねー。
のどかって言えばのどかですが、何かが起きてからじゃ遅いから、ちょと心配…。
ウチはクーラーガンガンにして寝てるので涼しいですが、起き抜けにいつもノドが痛いです。

投稿: ケイトリン(管理人) | 2008年8月15日 (金) 00時27分

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