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2008年8月

「REGZA」ショック! ~喧嘩の火種はテレビから~

ファラウェイ・マウンテン家のテレビは、東芝の「REGZA」(37インチ)である。「年末年始は、どうしたって新しいテレビで観るんだモン!」…昨年末のオットーの強硬主張に、ケイトリンが折れたカタチである。

「REGZA」の魅力は、“PCに録画できる”点だろう。名古屋出張から帰って来たオットーは、いそいそとケーブルをつなぎ始めた。平たい変わった形状について、聞いてみる。「コレ、普通のケーブルと違うけど?」、「ウン。“きしめんケーブル”って言うんだよ」、「普通のケーブルじゃ、ダメだったの?」、「イヤ、別に。色がウチの壁に合うからさ」。

ファラウェイ・マウンテン家の壁の色は、すべて白である。オットーの買ってきたケーブルは、灰色であった。「ねえ! 全然違う色ジャン!っていうか、前からウチにあったケーブルのほうが、白だから合ってると思うンですけど?!」。

「そう?」…明らかに、電気屋さんで衝動買いしただけである。もう一つ、納得いかないコトがあるので聞いてみる。「名古屋から『お土産、何がいいんだっけ?』って電話もらったけど、ソレはどうなったの?」、「イイのがなかったんだよ」、「えーっ?!キオスクで売ってるツマミだよ? “名古屋コーチンのササミ燻製”とか、新幹線の乗り場にフツーにあるでしょうが!」…鼻息荒く話していたら、ハッとなった。

「も、もしかして、名古屋名物が“きしめん”だけに、“きしめんケーブル”と?」、「おっ、偶然だけど、シャレてるね。アハハハハ」、「オットー、今からコレ、ハサミでチョン切るけど、自業自得だよね?」、「ダメだよ! ダメに決まってるでしょ」。

これを契機に、オットーのテレビ・ライフは、とっても充実するようになった。まともな時間に帰って来られなくても、お笑い番組やドキュメンタリーをチェックできるのだ。でも、“良いコトには、悪いコトもついてくる”…そう、ケイトリンのテレビ・ライフに、異変が起こったのである。

「ねええ~。“名探偵ポアロ”の時間なんだけどー」、「ダメダメ。ケイトリンはコレ、何十回も見てるでしょ?」、「そのくらい、好きなんだよ」、「ダメ。オレもこの映画の原作者は好きなんだよ」、「えー!でも、ご飯の最中に“甘酸っぱい青春群像劇”なんて、観たくないよー」。

すったもんだの挙句、“両者が許容できる番組”を観ることになるが、ドッチも幸福になれるテーマなんて、なかなかないものである。ケイトリンの好きな「実録!犯罪捜査ファイル」になれば、オットーは早食いになってしまう。オットー録画の「離島サバイバル!100万ドルは誰の手に!?」になれば、ケイトリンの酒が進むばっかりである。

でも!今はオリンピックなので一時休戦…戦うスポーツマンの輝きは、ふたりを魅了してくれるのである。「ほおお。この選手の演技はすっごくキレイだね」、「ホント!日本人の選手も随分すらりとした体形になって、見栄えがするようになったよ」…オットー&ケイトリン、仲のイイ夫婦である。

「90年代生まれだもんな」、「まったく、あたしたちの世代とは全然違うよねえ!うらやましいよ」、「そう? ケイトリンの世代でもキレイな人はたくさんいるよ」…不穏な空気がたちこめる。「オットー、するってえと、ソレは何だい? ケイトリンはどういう立場になるのかね?」、「え?それは、そのサ…」。

どんなトコロからも、諍(いさか)いの火種を拾い上げるあたり、ケイトリンもトウが立ってきたなあ”…我ながら、呆れるのを通り越して、感心してしまう。“来月は33歳の誕生日、正統派のオバサン主婦になれるように、頑張ります!”…こんないさぎよい決心、あってもいいんじゃないかと思うのである。

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納涼体験! しのびよる“恐怖”を探る

駅までの道のり、街灯が途切れて、急に薄ッ暗くなるところがある。前から来るのは若いサラリーマン…飲んできたらしく、大股で投げやりな足音を立てている。ケイトリンは男を避けるように、でも気づかれないように、心もち脇に寄り、すれ違う。

ゲボッ!!」…男は大音量でゲップをした。軽く飛びのいてしまったケイトリンに気づいたかどうか…ヤツはますます気持ち良さそうに、バタンバタン歩いていった。こないだのモッズ・ヘアの勤労青年以来、“お化けよりも人間が怖い”と感じる今日この頃なのである。

ケイトリンにとっての田舎は、ママの実家の長野である。山間(やまあい)の村で、昔話や伝説が、今も息づく土地だ。ケイトリンも小さい頃から、“お化けと人が交錯するような不思議な話”をたくさん聞いている。

「今朝吉おじさんはヘビを捕まえるのが好きで、イタズラばかりしていたら、呪いがかかって高熱を出した」。このおじさん、お祓いをしてもらって快癒したらしいが、その後は改心して、ヌードカレンダーの収集に精を出したということである。金歯や金の指輪も大好きな人だったな…。

「どしゃぶりの夜中に窓に向かって、何度もモノを投げる者がいる。外をうかがっても誰もいなかった。朝見てみたら、桃の種がたくさん落ちていたが、アレはタヌキのいたずらだろう」。国道沿いに建つ家だから、いたずらがあってもおかしくないけど、桃の種とは…本当に“タヌキの仕業”かもしれない話である。

「墓場でかくれんぼをしていたら、白い大きな布がフワフワ浮いていた」。コレは実は、ケイトリンの目撃談である。8歳くらいの夏休み、いとこ2人と遊んでいたときのことだ。2人が隠れ、ケイトリンが探していると、墓場の真ん中あたりでシーツのようなものが浮かんでいるのが見えた。いとこがふざけているのかと思った。

「大きな布が飛んでたよね?」、「そんなのナイよ」…ふたりは何も持っていなかったし、全然違う方角に隠れていた。子供だったので、「ふーん」で済んでしまったが、あれは何だったのだろう。

オットーは自分がお化けみたいだからかどうか知らないが、怖いものなんて何にもないそうである。「科学がイチバンさ」…でも、一度だけ「アレはおかしかった」と言う話がある。会社で泊まりの仕事をしていたときのことだそうである。

会社の1階は、エレベーターホールが中心にある。周囲は玄関を起点にグルリと窓がめぐらせてあって、その窓の下がベンチになっているそうだ。日中は明るい光が入るので、そこでおしゃべりをする人も多いとか。

あの日のオットーは夜食を買い、エレベーターを待っていた。社内にはほとんど人がいないので、ホールの小さな明かり以外は真っ暗にしてある。「ん?」…窓のほうに目をやると、人が座っている。シルエットでしか分からないけど、多分男性だ。膝にヒジをつき、頭を軽く下げてうなだれている。

本当に人がいたのだと思う。でも、何だかヘンだ。「夜だから暗闇に目が慣れているはずなんだけど、輪郭がはっきりしないんだよ。ぼんやりとして。あと、“人がいる”って感じが全然しなかったんだよね」。少し寒くなって、オットーはエレベーターに乗りこんだそうである。

どの話も、“ソレ、お化けだね!”って言い切れない。でも、だからこそ、想像する隙間に恐怖が忍び寄るのかもしれない。昔は怪談におびえたが、今は何の予兆もなく起こる現象、「何かヘンだ」っていう、“自覚を揺るがす「ゆがみ」”におののく。大人になるといろいろな感覚がにぶるというけれど、“恐怖”については、まだまだ開拓の余地があると思うのである。

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モッズ・ヘアの勤労青年

今どき、鍵を閉めずに寝られるマンションなんて、そうそうないだろう。でも、オットー&ケイトリンが住まうマンションでは、まだイケるらしいのである。通路を吹き抜ける風を取り入れようと、スニーカーやサンダルを挟んでドアを開けておく部屋が、結構見受けられるのだ。

不審者出没!注意!」という張り紙が出たのは、2週間くらい前のことである。周りには新しくてステキなマンションがいっぱいあるので、泥棒は入らないだろう。でも、“まだまだ昭和が満ちている、ココの平和を乱すなんて!”…夕暮れ時、蝉時雨に蚊取り線香が匂うたび、心が痛んでいたのである。

“今までは夜中にゴミ捨てしてたけど、怖いから朝にしよう”…ケイトリンは少し明るくなった朝4時に、家を出た。「“出た”なんて大げさね!」と思われそうだが、2棟がそびえる大型マンションでは、ゴミ捨て場までの往復が、5分では済まない

エレベーターホールでボタンを押すと、9階に止まっていた1基が上ってきた。1階から上がってくれば人は乗っているが、途中の階からはまずありえない。汗だくのスッピンを見られなさそうで、ホッとする。11階に着いた時も、当然誰も見あたらず、完全に安心して乗りこもうとすると…「ギャッ!!」。瞬間、男が現れたのだ

オカッパに太い黒縁のメガネをかけ、汚れた白いTシャツを着た痩せぎすの男…“何者なのか、サッパリ分からない”。どんなカテゴリーにも仕分けできないこの男を見たとき、“ああ、間違いなくアタシの人生はここで終わる”、そう思った。

心臓が口から滑り出しそうになり、後ずさりしたとき、運命の扉は開いた。「は?」…いきなり男が言う。「え?!」…総毛立った全身から力が抜ける。男の手には新聞の束、朝日新聞さん、ご苦労さまです。ウチのオットーが愛読してます…。

エレベーターの上部の窓からは姿が見えなかったが、新聞を抱え上げて中腰になっていたのだろう。「す、すいません。驚いたもので」、「はあ…」。“何?この女”と言わんばかりの侮蔑のまなざし、配達員はサッサと歩いていった。ケイトリンはなぜか敗北感でいっぱいになり、エレベーターのなかで愚痴を反芻した。

“アンタはワケが分からなかっただろうけど、アタシが驚いたのは無理ないワ。アンタの髪型、何よ? 新聞を配ってる勤労青年には、全然見えないわよ”。

別に“この職業には、こういう雰囲気じゃなきゃ!”って考えに固執しているワケじゃない。明け方に突然モッズ・ヘアを目撃したから、“不審者にしか見えない”って思ったのである。

帰ってくると、きちんと新聞が差しこまれていた。オットーは安らかな寝息を立てて、眠っている。ケイトリンの枕を抱きしめているので引っぺがすと、今度は上掛けを丸めて、ひとり占めしている。思えばオットーも、新聞配達員だった。50キロそこそこでやせ細っていたオットーは、配達先で牛乳をご馳走になったりしたそうだ。

このご時勢じゃ、そういう親切な人もいなくなっただろうし”…新聞の集金が来ると、やけに優しくなるオットーを思い出し、痩せぎすモッズ・ヘアの勤労青年の苦労を思った。

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さよならタイランド、コップンカー!ルーシー&ショーン

いよいよ最終日! 午前中は、シルク王として知られるジム・トンプソンの家を見学する。タイの古民家を何棟も組み合わせたものだが、赤く塗られた室内が何とも艶やかでエキゾチックだった。イタリア製の大理石の床やオーナメントとして飾られた“歴史的遺物”(仏像や絵画。いいんだろうか?)が、不思議な調和をかもし出していた。

取材慣れしたルーシーが、館内ガイドさんに的確な質問をぶつけている。そして、オットーも小首をかしげている。その手にはパンフレットが握られており…ケイトリンは嫌な予感がした。オットーはそれほど大切じゃない内容でも、納得いくまで問いただすコトがある。

果たして、そうだった。「パンフレットによるとこの家は、建てられてすぐに見学できたみたいなんですけど、そうなんですか?」。トンプソンが住むために建てた家なんだから、普通に考えればそんなハズはない。ただの文章の書き間違いなのだが、オットーは文章と事実の一致を確認したいのである

「いいえ。友達だけ見ることができました」…タイ人のガイドさんは、面食らいながらも丁寧に答える。「一般人は見られなかったんですね?」、「オットー、そんなの当たり前でしょ?」、「いやいや、パンフレットに書いてあるからさあ」…時々、妙なひっかかりを見せるオットーである。

午後、「内容大盛りの6日間、疲れも溜まったでしょうから…」と、ルーシー行きつけのタイ・マッサージ屋さんへ行く。1000円くらいで1時間みっちり施術を受けられるんだから、マッサージ好きにはこたえられないだろう。

2週間滞在したケイトリンはいろいろなマッサージを受けたが、共通して感じたのはタイ人女性の指のしなやかさと強さだ。細く柔らかい女性の手なのだがよくしなり、手のひら全体のパワーを指先に凝縮するような、独特な力の入れ方をする。日本の男性マッサージ師と比較すると面白いかもしれない。力強さでは引けをとらないのに、痛ダルい揉み返しがなかったなあ…。

オットーは頭のマッサージが良かったと言っていたが、肩も腰も“こった”経験がないので、大絶賛には至らなかったようだ。「ルーシーがエビ反りにされてるのを見て、吹き出しそうになった」なんて余計なコメントはさておき、タイマッサージを受けるときの注意をケイトリンからひとつ。「キレイにしてない時に行きましょう」…たいていは上っ張りとズボンの用意があって着替えられるけど、気になるのは“施術の段取り”なのだ。

汗ばんだ足の裏をモミモミして、その手のまんま頭や顔に向かってマッサージするわけだから、ちょっと気になってしまう。施術の女性が足を使って体の筋を伸ばしてくれたりするのも、裸足で歩き回っているのを見るだけに“う~ん”と思ったりし…。

そうなると、一日の終わり、ホテルでシャワーを浴びる前などにやってもらうのがベストだと思う。髪の長い人はボサボサ覚悟で、間違ってもご自慢の巻き髪にして出かけないように…。頭皮マッサージに備えましょう☆。

最後に、これまで紹介できなかった面白い写真を並べて、タイ旅行の大団円とさせていただきます。大事な朋友のルーシー・ハイフィールドに、優しくて紳士的なショーン・ペイ、そしてオットー&ケイトリンをすっかり虜にしてくれた、タイの素晴らしい人々にも大感謝! コップンカー(ありがとう)!!

(写真の説明上から下へ:◎ TVでもよく見るカレン族の女性。首に付ける金の輪が多いほど美人とされている。ミャンマーから亡命してタイ政府指定の居住地におり、観光で生計を立てている/◎ タイは野良犬が多く、たいていは人懐っこい。皮膚病のためか、瞳があまりにもショボくれて可愛い/◎ タイはソーセージや魚の練り物が美味しい。酸味と辛味がやみつきになるネム(生ソーセージ)をはじめ、屋台の焼き立ての匂いはたまらなくそそられる/◎ 60円で絞りたてのみかんジュースが飲める。オレンジよりも優しい酸味、日本のみかんよりも濃厚な甘みで、“たかが、みかん”なんて言えない美味しさである。バンコクなら駅スタンド、田舎なら屋台とどこでも飲める)/◎ タイ北部の温泉地「メーホンソン」のマッド・スパ体験。源泉の底に溜まったミネラル分たっぷりの泥を体に塗る/◎ 同じくマッド・スパの温泉。プールのようだが40度ほどのトロリとした湯。泥を落とした後に水着のまま入る)

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タイ旅行5日目:世界遺産・アユタヤ~贅沢なバンコク最後の夜

前日のケガレを落とすため(?)、仏塔立ち並ぶ世界遺産・アユタヤを訪れる。運転手付きの乗用車をチャーターしたので、ルーシーとオットーと3人、気が置けなくていい。…いや、でもケイトリンはちょっとビクビクしていたのだった。“タイ人の運転手さん”にである。

乗り物酔いするケイトリンは、車や電車のなかで大変お行儀が悪い。靴を脱いで横座りしたり、前の座席の背のあたりに足をひっかけたりして、リラックスするクセがある。アジアの電車のなかなど、マナーもへったくれもなかったりするので、ますます気が緩んでしまうのである。

昨日のサメット島の帰りの車でもそうだった。サンダルを脱ぎ、ドアの側面に足を投げ出してオットーとしゃべっていたら、運転手さんがチラチラこちらをうかがう。“何じゃらほい?”と思っていたら、「No foot !」と注意されたのである。恥ずかしさと驚きで気が動転するが、すぐに謝って後は行儀よくしていた。

タイでは足の裏は不浄のものとされていると聞いてはいた。でも、どの程度で“一線を超える行為”になるのか分からない。人にもよるだろうし、“今日の運転手さんには怒られないように…”、緊張が細い糸のように、ピン!と張っていたのである。

P1000858 バンコクから1時間半くらいで、アユタヤの市街に到着する。緑の芝生が広がり、レンガ作りの仏塔がそこかしこに姿をあらわしている。車の往来が少なく、観光客を乗せたゾウが水辺をゆっくり歩く様子も、熱帯らしいのどかさである。

ベトナムに住んでいた頃、世界遺産のハロン湾に行ったことがあるが、整備が行き届かず乱雑で、ウンザリしたことがあった。便器もないようなトイレに、何キロも付きまとう物乞いの子供、ゴミが浮く岸辺から絶景ポイントに行ったところで、テレビで観るような素晴らしさは感じられないのである。その点、アユタヤは良い環境が保たれているので、そこにまず感心してしまった。

初めてゾウに乗り(意外に揺れが少ない。ラクダに乗ったときのほうがずっと怖かったのを思い出した)、寺院にお参りする。仏様には蓮のつぼみや線香を捧げるが、珍しいのは金箔だろう。60円ほど払うと紙に挟んで数枚くれるので、それを仏様の体にくっつけるのだ。ベットリした粘着剤がかけられて、はがれないようにしてあるが、頭とか胸のような人気の箇所はうまく付かない。あちこちに金片が飛び散り、みんなの足の裏がキラキラしているのが面白かった。

日本のような棒を引くおみくじもあり、観光地らしく英訳もされている。吉とか凶じゃなく、隠喩を織り交ぜた未来予想になっていて、結構キビシイ内容である。オットーは「何だよ、何にもうまくいかないジャン!」とお告げに悪態をついていた。

おみくじ代は一律で取らず、“あなたの思う額を入れて下さい”という箱があるのみ。“本来、お布施ってこういうモンだよなあ”と、またまた感心する。日本だとお賽銭は小銭が当たり前だが、タイの人々は高額紙幣を捻出し、長時間の祈りを捧げる。「同じ仏教徒ですね」などと、軽々しくは言えないのである

P1000860 アユタヤの遺跡のほとんどはレンガの仏塔で、最初は熱心に写真を撮っていたオットーも、飽きてしまったらしい。「日常をアーティスティックに切り取るんだよ」などと言いつつ、ワケの分からない写真を撮り始める。

オットーの最近の“アートな作品”は、ケイトリンの「下から二重アゴ」、「水着からはみ出すワキのお肉」、「疲れきった深夜の化粧崩れ」などで、“美しくも楽しくもない”のが特徴である。今回は、ルーシーとケイトリンの後ろ姿で、「日本人女性のたくましいお尻に、インスピレーションを得た」と語るが…巨匠、そろそろイイ加減にして欲しいものである。

日本人街跡や山田長政の記念碑を見物し、バンコクに戻ったのは夕方5時…今日はバンコク最後の夜なので、飛びっきりのオシャレをして出かけることにする。ショーンも合流して、北京ダックに紹興酒のディナー、ステートタワーの64階のバー「The DOME」に繰り出し、カクテルで乾杯した。

これだけの高層階でオープンバーというのは、本当に贅沢! 眼下の夜景は言わずもがなの美しさだ。ライトアップされた白いドームに立ち、夜風がドレスの裾を吹き上げるたび、ハリウッド女優のようなゴージャスな気分にさせられる。「仕事が終わったあとにここに来ると、『ああ、あたしは世界を征服した~!』って感じの開放感に浸れるのよね」、ルーシーはそう言っていた。

「うちの11階からの景色とはさすがに違うね」…オットーの一言で現実に戻る。そう、ケイトリンは2週間の長い旅から明日、日本に帰るのだ。「何か、実感が湧かないな…」。日本の今頃は11時過ぎ…ビール片手に夕飯の仕度をしている“いつもの自分”がいるはずだ。でもそれが思い浮かばなくなるほど、体も心もタイで“暮らし”を始めていたことに気づいたのだった。旅していて寂しくなるのは、こういう時である。

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タイ旅行4日目:「女に安住するべからず」 ~ゴーゴーバーからの警告~

サメット島内を走る車は幌なしのピックアップトラックだ。数人ずつ向かい合って座り、ガタゴト道を行くことになる。時々穴ぼこにはまって軽く飛び上がる以外は、乗客は黙って陽射しに耐えていなくてはならない。ショーンもオットーも顔をしかめながら、大人しくうつむいている。それを向かい側で眺めていたケイトリンは、隣のルーシーに話しかけた。

「信じたくないけど、前のふたりは…付き合ってる感じ?」、「…うん、そうね」、「あたしたちがいなかったら、日本から来たゲイカップルだな」。「やっぱ、ショーンが女役だろうか?」、「いや、ぽっちゃりが女役ってパターンも多いよ」、「じゃ、オットーさんが女か」。

線の細い感じのショーンも、体格のいいオットーも、共通なのは“なで肩”だ。首から肩にかけてのラインが優しいので、禁断の愛の逃避行にはもってこいのカップルに見えてしまうのだ…いや、見えただけではない。12時間後に“ある一線”を超えようとするふたりを、予見していたのかもしれない。何が起こったのか、話すべきだろう。

バンコクに帰ると、“ディナー”と呼ぶにふさわしく、本格的なイタリア料理にワインをたらふく味わった。ハシゴしてドイツビールまで飲んで、ヘロヘロになった頃、口火を切ったのはルーシーだった。「そろそろ、ゴーゴーバーに行こうか!」。「よし、行くか!」…乗ってきたのは、ショーン・ペイだった。“この分野なら、オレに任せてんか~!”という、大阪人らしいノリが感じられ、また得意分野への自信も感じられた。

まずは「女の子がいるバー」に入店、マルガリータを頼んでシートに座ると、何本ものポールに1人ずつ黒ビキニの女の子が立ち、リズムを取りながら指名を待っている。天井はスケルトンで、ミニスカの女の子たちが踊っているのが見える(モチロン、おパンツを見せるようにこうなってるワケ)。…と、ショーンが大発見!「女の子たちの水着、シースルーですわ」…確かに! 微妙に透けるような素材とは…。エロを通り越して、卑猥の確信犯である。

あくまでも“見物”目的の4人は次なる店へ移動、そこは「オカマちゃんのバー」だった。さっきの店と基本的に同じだけど、100%女の子の店よりも清潔感とプロ意識が見られる。間違いなく、ルーシー&ケイトリンより美しい子ばかりなのだ。「ルーシー、あたしたち、女ってコトに安住してた気がしないか?」、「確かにね」。

日本のアイドルそっくりの顔立ちと仕草の少女(少年)は、最強の媚びた視線をコチラに送る。“男どころか女もオトされそう”…クラクラしてると、オットーが言う。「ココは女の子“と”来るトコじゃないよ」。

ルーシーとケイトリンに配慮した紳士的発言のようだが、そうじゃない。オットー、自分がいっぱいいっぱい、パツンパツンになってしまったのだ。ふと思いついて言う。「ルーシー、あたしたち、帰ろう! ショーンとオットーで楽しんでもらおうよ」、「そーだね! あたしたちも男の子を指名できる店とか、行っちゃう?!」。

それまで「モチロン、いつだってルーシーを指名だよ!」などと軽口をたたいていたショーンだが、“男ふたりで楽しめば提案”をすると「うん。そっか」とあっけなく了解したらしい。軽くムカついているルーシーが面白かった。

さて、帰宅してウォッカのカルピス割りとビールをあおって30分…。「ウチのオットー(ショーン)は、どうして過ごしているかしらん」などとカワイク小首をかしげていると…男たちは戻ってきた! 早過ぎるご帰還である。

「早いじゃん?!」、「え、そうかな?」、「何してきたの?」、「何にもしてないよ。指名したけど、何にもしてない。ケイトリンの残したビール飲んで、帰って来たよ」。いろいろ聞いたが、肝心のところは語らない。

ベッドルームに引き取って、さらに食い下がること10分、オットーはようやく吐いた。「『触ってよ』って手を取られたから、ちょっと太ももをサワサワした。本当にキレイな人だからボーッとなったんだけど、理性が“コイツは男なんだ”って言うんだよ。で、このままだと頭がおかしくなりそうで、どうにかなっちゃいそうだったから…」。

「フムフム、なるほど。カミングアウトしそうになったわけだね。オットー&ショーンは」、「そんなコトないよ」、「いやいや、サメット島のふたりを見ててね…なるほどね。道理でね。素質はあったわけだから」、「エ~ッ!」。

…一線を越えず、お互いに目覚めちゃった★ケハイもないので一応、ひと安心である。でも、“男と女の性なんて、欲望の前には紙一重”…そんな怪しい世界を垣間見せてくれたゴーゴーバー・ナイトだったのである。とにかく、一度訪れてみるといい。踏み出してしまった人を馬鹿にすることなんて、到底できない世界である

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タイ旅行3日目:サメット島で終日ノンビリ

サメット島はタイ人も憩うリゾート地、日本で言えば都心からの距離といい、お手軽感といい、伊豆あたりに似ているかもしれない。マルガリータで乾杯した昼食のあと、船着場から島に向かった。

「イエ~イ!」…はしゃぐオットーは、船のキワにめぐらされたベンチに座る。が、気づくと皆はライフジャケットが用意されたシートに腰を落ち着けているようだ。「オレはココがイイんだ!」…そう言った手前、太陽の熱射を受けながら、我慢することになったオットーである。

ルーシーとケイトリンは船酔いを感じながら雑談で気を紛らわせるが、前の座席のショーン・ペイは熱心に本を読んでいる。「ショーン、何の本なの?」、「ん?麻生太郎のですわ」…!?。南国気分に浮かれる人々のなか、政治家の新書を熟読するショーン・ペイ…さすが、24時間働けるジャパニーズ・ビジネスマンだと感心してしまったのである。

P1000815 サメットのビーチは、のどかで美しかった。白い砂の肌理(きめ)はとても細かく、素足をサックリくるんでくれるような、心地よさがあった。天秤売りがスルメや焼き玉子を運んでくるし、近くの食堂では冷たいビールが買えるのもいい。

オットーが言った。「海ってのは風を受けながら、シートに寝そべってのんびりするトコなんだよ」…だったら、サメットは最高のビーチである。人が多すぎず、整備されすぎず、素朴な海遊びができるところなのだ。

海中での逆立ちが得意なショーン、次は「せっかくだから」とルーシーをお姫様抱っこする。ちょっとうらやましいケイトリンはオットーを探すが、ヤツはずーっと遠く、沖近くにひとりプカプカ浮いていた。「オットーさんて泳ぎ、得意だっけ?」、「いや、どっちかっていうと、そうでもないハズ」…この旅の間中、オットーのマイペースは続くのである。

夜は満点の星空のもと、ビーチレストランでシーフード三昧だ。昼間の熱をわずかに留めた夜風が、ビュウビュウ髪を散らすのも、南国の海辺らしくて気持ちよい。「アレは、さそり座でしょ?」、「白鳥座じゃなかったっけ?」、「夏の大三角形が…」、「そもそもココに星座の専門家はいるのか?」、「あ、あたしあたし。サークルでプラネタリウム、作ったんだけどなあ~」。

キッコーマンとマナオ(タイのレモン)で海老を食べながら、とりとめのない話をする。こういう時間は一瞬のインパクトがなく散漫だが、後々旅の記憶から滲み出してくるような思い出になる。心と体の力みを抜き、好きな人たちとぼんやりと語らう…地味だけど大切な時間なのである。

P1000818 そうそう。紹介しておきたい犬がいる。コイツは海辺で暮らす野良で、ビーチサイドを歩き回り、気に入った人の近くでそっと寝そべるだけの犬である。もちろんご飯は欲しいだろうが、ガツガツはしない。何となく眺めて、もらえなければ体を横たえ、人間と一緒に寝息を立てている。

最初は犬嫌い(子供のころに噛まれたそうだ)のショーンのところに座り、そのうちにオットーの隣でのんびりし始めた。波が荒くなって日没が近づいた頃、砂のお城の残骸に埋まってぐっすり寝入っていたのが、何とも可愛かった。

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タイ旅行2日目:オットー、マスオさんに~タイスキに舌鼓~ムエタイに熱狂!

「オットーさん、あんなのイイんじゃない?かわいいジャン」、「いや、オレはかわいいのはヤダ」。「オットー!これ、絶対イイって。着てみなさいよ」、「ん~、なんか、ちょっと…」。「ねえ、ケイトリン、オットーさんにさ、コレどうよ?」、「え~。オットーはピンクなんか着ないってば」。

期待ふくらむバンコク2日目、オットーは、予期せぬ事態におちいっていた。嫁と小姑に振りまわされるマスオさんのごとく、洋服屋さんで大汗をかいていたのである。“「オレは屋台を冷やかしながら、街歩きしたい」って言ってたのに”…今いるところは、「ブリティッシュ・インディア」、マレーシアを拠点とする高級ブランドの店なのだ。(コットンのシャツが2万円超もザラ!)

ルーシーもケイトリンも散々自分の趣味を押しつけた挙句、オットーを試着室に押しこめる。「着てみたよ」って出てくると、なぜか女ふたりも試着室に入ってて出てこないのが不合理である。(これを、“誰の買い物に来たんだかワカンナイ現象”という)。…ここではオットー、自分の趣味を貫いて、感じのいいシャツ2枚を購入した。

日本にも支店があるタイスキの店「MK」で遅めのランチをとる。せっかくのホリデー、ビールを頼むが酒類の販売許可時間外なので、断られる。なのに手違いで運ばれてきたモンだから、ほろ酔いイイ気分になる。…ケイトリンはもっと飲みたいと懇願するが、平身低頭で応えられ、断念するしかなくなった。

肝心のタイスキの味は、実に日本人好みである。鳥のスープに肉や野菜、いろんな具材を入れるわけだが、練り物の甘い香りや味がやさしく溶け込み、“亜流のおでん”を食べているような感じが強かった。タイ人はそれに、辛い味噌をたっぷり入れて食べるそうだ。

さて、夜は待ちに待ったムエタイ観戦である。スタジアムの近所のナイトマーケットに販売員が出張っているので、そこでチケットを購入した。ひとり2000バーツ(約6000円)で、一般的なタイ人では到底払えない高額である。

Photo 席はまさにリングサイド! 選手の汗の飛沫(しぶき)まで見える特等席で、大興奮だ。ビールをゴクゴクあおりながら、16歳の選手の殺気に輝く瞳(写真を拡大すべし!)を見ていると、ドッチに酔っているんだか分からなくなる。

ムエタイは“華麗な飛び蹴り”が売りの競技かと思っていたが、そうではないらしい。首と首を抱え合いながら、ボディーに食らわす膝蹴りの応酬…そこにタイ人は熱狂する。ヒイキの選手が膝を入れると、その回数に合わせて「ウーッ!ウーッ!…」と連呼する。首相撲状態になると、俄然盛り上がるのには驚かされた。

また、リングサイドにはタニマチがわんさかいて、トレーナーやコーチの声をかき消すくらいに大騒ぎしている。ルーシーによると毎試合、大金がかかっているそうなので、なるほど納得…。親愛の情をこめた応援とは違う、自らも戦っているような怒号が乱れ飛ぶサマは、鬼気迫るものがある。

P1000811_2 …観戦時間は3時間以上、タイトルマッチを含めて15あまりの試合数だったが、退屈することはなかった。聞き取りにくいが日本語のリングサイド解説もあり、思いのほか観光向けの興行が成り立っているのだな、と感心した。

最後に、戦う男たちの色気にノックアウトされた3人のコメントをまとめてみよう。ルーシー、「付き合うんなら、青コーナーのほうだな。あん?ケイトリンとダブった?ダメダメ、アタシが青ね」。ケイトリン、「アタシ、青田買いして、若い選手のタニマチになろうかなー。一緒に野菜を食べて、ストイックな恋愛を貫くってのも、ああ!」。オットー、「帰りにムエタイの頭と腕の飾り、買ってイイ?…頭に入らないから、ダメだなんて、ヒドイよ~!ケイトリンはイジワルだ。離婚するっ!!」…お粗末さまでした。

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