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明け方のファンタジア ~ポメぞう編~

オットー&ケイトリンは、高層階に住んでいる。周りに同じ高さの建物がないから、町がよく見渡せる。灰色の道が、地図のように枝分かれして、いつも通る道がこんな角度で曲がっているんだって分かる。ふたりの大好きな時間は、明け方。暗い夜空に、朝日の明るさが染み出してきて、群青色になる時。ビルの表面が虹色に輝いて、今日も華々しい朝がやってくるのだ。

上空の美しい変化をよそに、下界はまだ薄暗い。ありんこのような人も見つからないけど、しばらく眺めていると、今日も来た! 小さな、小さな、犬ころが。せっせこ歩く姿が弾んでいる。“お散歩大好き、楽しいな~”と。喜びがコロコロと道を行く。よく見ると、小さな犬じゃなくて、ゴールデンレトリバーだから笑っちゃうけど。

ベランダから、オットーが見つけて、ケイトリンもファンになった犬ころがいる。おばあさんの連れたポメラニアンだ。13歳のオスで、名前は「ポメぞう」。一度聞いたんだけど、本当の名前は忘れちゃったので、こんなふざけたあだ名で呼んでいる。

Photo_4「ポメぞう」は歯が悪いから、いつもベロを出しっぱなしで、愛嬌を振りまいている。一般的なふわふわな外見ではなくて、柴犬みたいなカットなのも、チャームポイントだろう。おばあさんが可愛がるのも分かるけど、それにしても歩いている姿を見たことがない。いつも抱っこされているばかりなのだ。オットーは「あれは、ポメぞうが、おばあさんを散歩させているんだよ」と言う。なるほど、そうかもしれない。

昨日の朝、そろそろベッドに入ろうかなとコタツの電源を切っていると、オットーが「ケイトリン、見て見て! ポメぞうが!!」と叫んだ。ベランダサンダルを履くのももどかしく、下に目を凝らすと、ホントだ。ヤツが歩いているじゃないか!

てこっ、てこっ…”、擬音にすればこんな感じかな。他の犬がせっせこ嬉しそうに歩くのに比べて、小さな足の歩みはゆっくりで重い。おじいちゃんだもの、仕方がないか。その後ろをおばあさんがのんびり付いていってたけど、ちょっと目をそらしたスキに一匹とひとりは消えてしまった。

「あれ、おかしいなあ」…見失うような場所じゃなし、オットーは不思議がっている。そこで最近、ダークファンタジーに夢中のケイトリンはこんな意見を述べてみた。「明け方は夜と朝の狭間で、空間がちょっと不安定なんだよ。だから、ポメぞうとおばあさんはちょっとしたスキマに入っちゃったんだよ」。

ここでどんな返しをするのか。国文科出身のオットーに期待してみたものの…。「ウンコしてんだよ。木の陰に入ってウンコ」。オットー&ケイトリンの明け方のファンタジアは、ものの見事に瓦解したのでありました。

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